暮らしの昭和誌

久しぶりの読書レポートです。若いころは世界の名作といわれる小説をいっぱい読んでやろうという気持ちで本を読みました。ただし、現在でもそうですが文学的な素養はないので、まったくの素人の読みで、深く読み取れていなかったことは確かです。そういったむかし読んだ本については物語の筋すら記憶があいまいになっているので、もう一度読み返してみないといけないなあ、などと考えてしまうともういけません。読み始めると自分の読みの浅さがよりはっきりとして、何回も読まなくてはいけないようになってしまいます。

ということで、読書の感想はなかなか載せられませんでした。けれども最近読んだ林えり子のエッセー『暮らしの昭和誌』はなかなかおもしろかったので、深く考えないで紹介します。

林えり子(敬称略)は作家でエッセイスト。昭和15年生まれといいますから、御年80歳になります。ちょうど昭和初期のまっただなかに生きてきたということになります。その人が戦後しばらくのころの生活のようすをエッセイとしてJALの情報誌『アゴラ』に連載して語ったものです。当時の生活のようすや道具について話しているのですが、独自の目線、独特の感性で語っています。よくぞこれだけ物事を深く観察していたものだと、感心させられます。

林えり子はわたしよりも10歳ほど年上なので少し時代がずれています。そのため話のいくつかはわたしの知らないこともあります。しかし、わたしと重なっていることもかなりあります。そのなかで特に心に残ったのが「ガリ版刷りの風景」「お洗濯の風景」「タイプの調べ」です。

「ガリ版刷りの風景」
記憶は不鮮明ですが、わたしが小学生のころ学校の職員室の横あたりに印刷室というのがあったと思います。そこで先生が配布物だったかをガリ版刷りの謄写版(なつかしい)印刷していました。それを手伝ったことがあります。謄写版というのはろ紙に鉄筆で書いた字をインクを付けたローラーで押さえて下の用紙に印刷をするものです。1回ローラーを転がすたびに印刷した紙が1枚できるので、これをローラーを転がすたびに転写用の枠を跳ね上げて、束になった紙の一番上の紙を1枚取り除くのです。今はプリンターでどんどん印刷されて出てくるので効率的になりました。しかし、こんな作業を手伝うことで先生とのつながりができていたのですね。効率化したことでなくなった心のふれあいのようなものもあったのです。こういった話題についてはわたしと共通です。
 
「お洗濯の風景」
むかしの洗濯板を使っての洗濯について書かれています。当時の洗濯は、大きな真鍮製のたらいで洗濯板をななめに寝かせてその上で衣類などをごしごしとやります。わたしの記憶では庭先にたらいをおいて水を入れ、かがんで洗濯をしていたように思います。わたしの家は狭かったので、炊事場の横に狭い水道場があったのですが、大きなたらいは置けなかったのでした。外でかがんで作業するのは手間もかかるし腰に負担がかかる作業でした。そんなわけなので、下着は毎日洗っていたように思いますが、他の衣類は何日かに1度しか洗わなかったはずです。

不思議なのは物干しに洗濯物をかけて干していたはずですが、どこに物干しが置かれていたのか覚えていません。洗濯物が翻る情景があったはずですが。そして、洗濯物を取り寄せした覚えもありません。もっとも、わたしの家は母子家庭で、母は平日は働いていて帰りは遅かったはずですから、下着類などは部屋干しだったのかもしれません。それも覚えていないのは不思議ですね。
 
「タイプの調べ」
わたしが子どものころはまだコンピューターというのはうわさに聞くぐらいなもので、きちんとした字を書くのはタイプライターでした。『スーパーマン』などのアメリカのテレビドラマで、事務員がパチパチと軽快に音を立ててタイプを打っている姿は、今でいうキャリアウーマンのハシリのような目で見ていました。男もタイプが打てると事務能力が高くなるんどと聞いたことがあります。どこのメーカーが指触りがいいなどという話を聞いたような気がしますが、とても買う財力はないので縁遠い世界のことでした。成人して働き出したころからタイプライターの役割は終わってワープロの時代になっていきました。ただし、ワープロでもタイピングは重要で、ブラインドタッチなどというのを練習してみたこともありましたが、根気が続きませんでした。

以上3点だけ例示させてもらいましたが、他にも多くの事物やそれにまつわる多くの知識とともに紹介されていて、なるほどなと思わされるものばかりです。ただし、なるほどと思うのは自分が経験した積み重ねがあるからであって、経験がなければ関心がもてず理解もなかなかできないかもしれません。わずか10才ぐらい下の人物と話をしていてもまったく通じないこともあります。それは時代の流れというものでしかたのないことでしょうが、せめてそんな時代があったということだけでも伝えたいものだと思います。

このエッセイは過去に生きた経験がなくともわかりやすいように説明されています。できればこのような本を座右に置いてたまには昔に思いを馳せるきっかけにしたいものです。


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