高慢と偏見

オースティンというイギリスの女流作家の作品で、名作との誉れが高く映画化もされました。人物の心理描写にすぐれた作品ということでした。ウィキペディアでも「精緻を極めた人物描写」となっています。そこまで名作と言われるんだったらひととおり読んでおかなくては、と読んでみました。しかし、よさはわかりませんでした。

まず『高慢と偏見』という題名が、わたしとしてはおもしろみのない題です。「高慢」は日常ではあまり使わないことばで、特に単語として出てくると、どういう意味だったけと考えてしまいます、少し考えて「高慢ちきな」ということばがあるなと思い出し、高慢ちきでいけ好かない男か女が出てくるのかと思ってしまいます。難しそうな印象を持ってしまう題です。『若草物語』のようなほんわかとした題のほうがとっつきがいいと思います。

『戦争と平和』『赤と黒』『知と愛』などと「と」を使って併置させる題名はいくつかありますが、対立するものを並べるか、対等なものを並べるかなのですが、この「高慢と偏見」は対立する概念ではないし、対等なものともいえません。

話は、ベネット家の5人の姉妹の恋愛と結婚の物語です。当時の女性の生き方として、よい家の男性と結婚をしてよい家庭を築くというのが人生の最大の目標ですから、どのように結婚までたどりつくかというのがこの物語のメインです。

主人公は次女のエリザベスで、知性的でものごとを冷静にみて他の姉妹の面倒をよくみています。結婚相手としてさまざまな人物が出てきます。隣に引っ越してきたビングリーとその友人のダーシーが姉妹にからんで話が進みます。貴族であるダーシーの高慢な態度と次女のエリザベスの偏見を軸にいろいろな事件やできごとが起こり、まわりがてんやわんやするけれども最後は誤解が解け、エリザベスとダーシーはぶじ円満に結婚するというストーリーです。

筋運びはよく練り上げられていて、誤解や偏見がわざわいして愛憎の感情がころころと変わるところはおもしろいと思います。しかし、舞台がイギリスでしかも貴族的な家の話ということで、紳士と呼ばれる人たちのえらぶったところが随所に出てきて辟易としてしまいます。「家」という考え方や男中心の社会が前面に出ているので、むしろ日本でいう時代物と同じと受け取った方がいいのかもしれません。時代的には日本の江戸時代ですから、武家の妻が三つ指ついて主人の帰りを迎えるみたいな世の中ですね。

誤解がさらなる誤解を生み、事態を悪化させてしまったりする場面では、「どうして冷静で知性的なはずなのにこんな早とちりをするんだ。」と人物像の設定ミスや展開のわざとらしさを感じます。そして、あまりにも簡単に相手に対する評価が変わってしまうところがあり、説明不足な気がしないでもありません。

たとえばベネット家の財産相続権を持つコリンズという登場人物について、「父親に服従しながら育ったために、卑屈な態度が身についたが、いまは、頭の弱い人間がひきこもって暮らしているうちに募った自惚れや、若くして予期せぬ出世をしたという思い上がったきもちによって、ほどよく中和されていた。」のように勝手に決めつけ解説してしまっています。心理学的な一般論としては納得のいくものですが、ここは個別の人物像です。話者は作者のはずですが、何をもってこう規定してしまっているのか、説明が不足していると思います。

また、ダーシーが長女のジェインと友だちのビングリーを別れさせた理由が納得できません。ベネット家のメンバーの何人かに礼儀作法上の欠陥があると言って別れさせているのですが、その礼儀作法上の欠陥がなんであるかの説明は読み取れませんでした。そして、ベネット家のメンバーに礼儀作法上の欠陥があるのなら、ベネット家のエリサベストとダーシーとの結婚にもあてはまるはずです。わたしが読み取れていないだけなのかもしれませんが。

わたしから見て感情移入しきれない部分をいろいろと取り上げましたが、たとえばテレビドラマの恋愛物にしても「こんなにうまくことが進むはずがない」とか「こんなに人の気持ちは一気に変わらないだろう」というようなことはいっぱいあります。そういう目で見てみればそれなりにおもしろいのかなと思います。確かに「精緻を極めた人物描写」とはなっていると思います。

何度も映画化されているのですが、残念ながらわたしは1つもそれを見ていません。映画を見るとまたちがった感想になるかもしれません。映画と原作ではストーリーは一致しながらも主題がちがったりすることかが多いので、また別の話として見るべきでしょうね。

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